「カスピ海ヨーグルト」の秘密The Secret of Caspian Sea Yogurt
「カスピ海ヨーグルト」のルーツ
「カスピ海ヨーグルト」のルーツは、ヨーロッパ東部の黒海とカスピ海に囲まれたコーカサス地方の「ジョージア(旧グルジア)」です。四季があり気候も温暖なため、耕作や牧畜にも最適な地域です。また、100歳を超えるお年寄りが元気に暮らしていることから、世界でも屈指の長寿地域として知られています。
コーカサス地方では、ヨーグルトをそのまま食べるだけでなく、さまざまな料理にも使われています。一般家庭には手作りのヨーグルトがあり、朝晩、どんぶり1杯分のヨーグルトを食べるそうです。
長寿食文化の研究が専門の武庫川女子大学国際健康開発研究所所長の家森幸男博士が、1986年に研究のためにジョージア(旧グルジア)の自家製ヨーグルトを日本に持ち帰りました。当時、家森博士は、WHO(世界保健機構)の協力を得て、食と長寿の関係を調べるために世界中を行脚。コーカサス地方で村人の食事のサンプルを集めたところ、いくつものヨーグルトが集まりました。
家森博士は分析の残りを自家製で食べ続け、ごく身近な人に分けました。
ダラキシビリ博士
ジョージア共和国ナツシビリ形態学研究所(旧ジョージア科学アカデミー実験形態学研究所)老化研究部長
家森博士は1986・1987年、ジョージア科学アカデミー実験形態学研究所のダラキシビリ博士の協力を得て、中部コーカサス地方を訪問、長寿の秘密を探るべく調査を実施しました。
50歳代前半の人と90歳以上の人を調査した結果、高齢者では血圧が比較的高い人が多かったものの、健やかに日常生活を送っていました。食生活をみると、野菜や果物、さらにヨーグルトなどの乳製品、肉、豆類、淡水魚から良質のたんぱく質を摂取していることが分かりました。血圧の高さは、高地で冬に食べる保存食の塩分が原因と思われます。
そしてもう一つ大切なことは、「センチナリアン」と呼ばれる100歳以上の老人が、いつまでも社会の中で尊敬され、家族とともに食事を楽しんでいるということが、長寿の秘訣として挙げられます。
家森博士は、1983年に初めてコーカサス地方のジョージア(旧グルジア)を訪れました。その際、村人たちの歓迎を受けて、採れたてのぶどうを山盛り振る舞われました。そこにはたくさんの蝿がたかっていましたが、家森博士は、「地元民と同じように食べるのが礼儀」と思って食べたところ、下痢をして大変だったそうです。しかし、なぜ同じものを食べた村人たちは平気なのか。家森博士は、日常的にたくさん食べるヨーグルトの免疫力に注目しました。
家森博士は帰国後、現地の人々に教わったとおり、スプーンに2、3杯分のヨーグルトを牛乳に入れ、一晩そのままにしておいたそうです。翌日には当時日本ではまだ珍しかった、とろりとしたヨーグルトが出来上がっていました。それ以来、このヨーグルトは家森家の朝食の定番になったそうです。
その後、フジッコにより、このヨーグルトから「クレモリス菌FC株」を分離・純粋培養して作られた「カスピ海ヨーグルト」の種菌の頒布活動を通じて日本に広まりました。
現在までに、「カスピ海ヨーグルト」についての様々な研究が行われ、コーカサス地方の長寿の秘密が明らかにされてきています。