「カスピ海ヨーグルト」の秘密The Secret of Caspian Sea Yogurt
「カスピ海ヨーグルト」の乳酸菌
ヨーグルトに使用される乳酸菌類
コーカサス地方より家森幸男博士が栄養分析のため持ち帰ったヨーグルトの中から、フジッコは優良株としてクレモリス菌FC株を分離しました。クレモリス菌FC株は楕円形の菌体がつながった「連鎖球菌(れんさきゅうきん)」の一種です(図1左)。代表的なヨーグルトに含まれる微生物には、ブルガリカス菌やビフィズス菌がありますが、ブルガリカス菌は棒状の形をした「桿菌(かんきん)」(図1 右)、ビフィズス菌は棒状・根棒状・分岐した棒状などの様々な形をしており(図1 下)、どちらもクレモリス菌FC株とは種類が異なります。乳酸菌は他の生物と同じように学名が付けられていて、クレモリス菌FC株の正式な名前(学名)は、「Lactococcus lactis subsp. cremoris FC (ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス エフシー)」ですので、「クレモリス菌FC株」とよばれています。この純正種菌であるクレモリス菌FC株で作ったヨーグルトを「カスピ海ヨーグルト」といいます。
クレモリス菌FC株は、乳製品に含まれる乳酸球菌の中では、生きて大腸まで届くことが明らかにされたプロバイオティクス乳酸菌です。これは、「カスピ海ヨーグルト」の摂取試験において、ヨーグルトを食べている時期はもちろん、ヨーグルトを食べるのをやめた2週間後でもFC株が検出される方がいたという研究結果をもとにしています。
クレモリス菌FC株が糸状の「ねばり成分EPS」を産生しているのがわかります。EPSと乳タンパク質が絡み付くことで、「カスピ海ヨーグルト」のねばりが生み出されています。
EPSとはExopolysaccharide(エキソ ポリ サッカライド)の略で、乳酸菌がヨーグルトの発酵中に産生する物質のひとつです。EPSは糖が繰り返し結合した高分子の多糖で、「カスピ海ヨーグルト」の特長的なねばりのもととなっています(図2)。クレモリス菌FC株が作るEPSは、ヒトの消化液で分解されないことが確認されていますので、クレモリス菌FC株とEPSはどちらも大腸まで届いて働くと考えられます。クレモリス菌FC株やEPSについては様々な健康機能に関する研究が行われています。